はじめに:「おしゃれな感じ」では伝わらない!デザイン依頼の難しさ
「ホームページを作るなら、デザインにはこだわりたい」
「でも、”おしゃれ”とか”かっこいい”としか言えなくて、イメージをうまく伝えられるか不安…」
ホームページ制作を依頼する際、多くの方がデザインについて悩みます。機能やコンテンツは言葉で説明できても、デザインのような感覚的なものを正確に伝えるのは非常に難しいものです。この「イメージのズレ」が、制作会社との間で起こるトラブルの最も多い原因の一つでもあります。
しかし、ご安心ください。Webデザインの基本的な考え方と、イメージを伝えるための「コツ」さえ知っておけば、誰でもスムーズに理想のデザインを形にすることができます。
この記事では、Web制作を初めて依頼する方に向けて、Webデザインの目的から、依頼前に準備しておくべきこと、近年のデザイントレンドまで、失敗しないための基礎知識を分かりやすく解説します。
そもそもWebデザインとは?見た目の装飾だけではないその目的
Webデザインと聞くと、色や形、写真やイラストといった「見た目の装飾」をイメージする方が多いかもしれません。しかし、本来のWebデザインの役割はそれだけではありません。最も重要な目的は、ホームページが持つ目的(売上向上、問い合わせ増など)を達成するために、情報を分かりやすく整理し、ユーザーをゴールまで導くことです。
デザインの土台となる「UI」と「UX」
良いWebデザインを語る上で欠かせないのが、「UI」と「UX」という2つの考え方です。
- UI(ユーザーインターフェース)
ユーザーがサイトと接するすべての「接点」を指します。具体的には、文字の大きさやフォント、ボタンの形や色、レイアウトなど、ユーザーの目に触れる部分すべてがUIです。「見やすい」「使いやすい」「分かりやすい」UIは、ユーザーがストレスなくサイトを回遊するために不可欠です。 - UX(ユーザーエクスペリエンス)
ユーザーがサイトを通じて得られる「体験」全体を指します。「このサイトは情報が探しやすいな」「問い合わせフォームが入力しやすくて助かった」といったポジティブな感情から、「ボタンがどこにあるか分からない」「表示が遅くてイライラする」といったネガティブな感情まで、すべてがUXです。優れたUIは、良いUXを生み出すための重要な要素の一つと言えます。
つまり、本当に良いWebデザインとは、見た目がおしゃれなだけでなく、優れたUI/UX設計によって、ユーザーを自然に目的達成(商品の購入や問い合わせなど)へと導けるデザインなのです。
【依頼前に】デザインのイメージを的確に伝える3つの準備
制作会社にデザインイメージを的確に伝え、認識のズレを防ぐために、依頼前に以下の3点を準備しておきましょう。これができているかどうかで、提案の質や制作のスムーズさが大きく変わります。
準備1. サイトの「目的」と「ターゲット」を再確認する
前回の記事『ホームページ制作の流れ』でも解説しましたが、デザインにおいても「目的」と「ターゲット」は全ての土台となります。なぜなら、誰に、何を伝え、どうなってほしいかによって、最適なデザインは全く異なるからです。
- 目的の例:企業の信頼性を伝え、BtoBの問い合わせを獲得したい。
- ターゲットの例:40代〜50代の企業の担当者。
- → 導き出されるデザインの方向性:誠実さや堅実さが伝わる、青やグレーを基調とした落ち着いたデザイン。奇抜なレイアウトよりも、情報が探しやすいシンプルな構成が好ましい。
このように目的とターゲットを制作会社に共有することで、「なぜこのデザインなのか」という根拠のある提案を受けられるようになります。
準備2. イメージに近い「参考サイト」を3つ以上見つける
デザインのイメージを伝える最も効果的な方法が、具体的な「参考サイト」を見せることです。「百聞は一見にしかず」で、言葉を尽くすよりも遥かに正確にイメージを共有できます。
参考サイトを探す際のポイント
- 同業他社だけでなく、異業種や海外のサイトも見る:思いがけないデザインのヒントが見つかります。
- 「好き」な理由を言語化する:「このサイトの、写真の使い方が好き」「このサイトの、メインカラーと文字のバランス感が理想的」など、なぜ良いと思ったのかを具体的に説明できるようにしておきましょう。
- デザインのギャラリーサイトを活用する:優れたWebデザインを集めた「ギャラリーサイト」で探すと効率的です。(例:SANKOU!、I/O 3000、Awwwardsなど)
準備3. デザインで伝えたい「キーワード」を書き出す
あなたの会社やサービスが持つブランドイメージを、キーワードとして書き出してみましょう。これがデザインの方向性を決める際の重要な指針となります。
キーワードの例
- コーポレートサイトの場合:「信頼感」「誠実」「先進的」「プロフェッショナル」「温かみ」
- 美容室のサイトの場合:「ナチュラル」「オーガニック」「リラックス」「高級感」「親しみやすい」
- 採用サイトの場合:「挑戦」「成長」「チームワーク」「革新的」「自由な社風」
これらのキーワードを伝えることで、制作会社はそれに合った色使いやフォント、写真のテイストなどを提案しやすくなります。
オリジナルデザインとテンプレートデザインの違い
Webデザインの制作方法には、大きく分けて「オリジナルデザイン」と「テンプレートデザイン」の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の目的や予算に合った方を選びましょう。
オリジナルデザイン
あなたの要望に合わせて、デザイナーが一から完全にオリジナルのデザインを作成する方法です。
- メリット:ブランドイメージを細部まで表現でき、競合との差別化が図れる。独自のレイアウトや機能を実現できる自由度の高さが魅力。
- デメリット:一から制作するため、費用が高額になり、制作期間も長くなる傾向がある。
テンプレートデザイン
予めプロが作成したデザインの雛形(テンプレート)を元に、写真やテキストを差し替えて作成する方法です。
- メリット:費用を安く抑えられ、制作期間も短縮できる。デザインのクオリティが担保されているため、大きな失敗が少ない。
- デメリット:デザインの自由度が低く、他社と似たような印象になりやすい。独自の機能追加など、大幅なカスタマイズには向かない。
まとめ:良いデザインは「対話」から生まれる
Webデザインの基礎知識と、依頼で失敗しないための準備について解説しました。
デザインはセンスや感覚だけで作られるものではなく、サイトの目的を達成するための「設計」です。そして、その設計図をより良いものにするためには、依頼者と制作会社の密なコミュニケーションが欠かせません。
今回ご紹介した準備をしっかりと行い、あなたのビジネスのビジョンや想いを制作会社に伝えることで、彼らはそれをデザインという形で具現化してくれるはずです。見た目が美しいだけでなく、ビジネスを成功に導くホームページを、パートナーである制作会社と一緒に作り上げていきましょう。