Webサイトのリニューアルや新規立ち上げに向けてRFP(提案依頼書)を作成する際、「競合サイトの情報はどこまで詳しく書けばよいのか」と悩む担当者様は少なくありません。「ライバル会社を意識しすぎていると思われたくない」「業界の裏事情をどこまで明かしていいものか」という迷いが生じるからです。しかし、私たち制作会社の視点から申し上げますと、競合サイトの情報はRFPにおける「羅針盤」のような役割を果たしており、具体的であればあるほど提案の精度は飛躍的に向上します。
特に重要なのは、単に「参考にしたいサイト」を挙げるだけでなく、「自社とは方向性が違う」「この表現は避けたい」という『否定のベンチマーク』を共有することです。これにより、制作会社は御社が目指すべき独自性の輪郭を正確に捉えることが可能になります。この記事では、長野・群馬の地域ビジネスにおける具体的なシミュレーションを交えながら、制作会社から「刺さる提案」を引き出すための競合情報の伝え方について解説します。この記事を読めば、RFPにおける競合分析の記述への迷いが晴れ、自社の強みを再確認できる資料作成が可能になります。
- 競合サイトのURL羅列だけでは不十分。「なぜそのサイトを意識しているか」の分析コメントが必須。
- 「真似したい点」よりも「嫌いな点(やりたくないこと)」を伝えるほうが、デザインの方向性が定まりやすい。
- 長野・群馬のような地域密着ビジネスでは、商圏が被るライバルの「Web戦略の穴」を指摘することが成功の鍵。
第1章 Web制作のプロは「競合サイト」のここを見ている
多くの発注担当者様は、RFPに競合サイトを記載する目的を「デザインの参考にするため」や「機能の有無を確認するため」と考えていらっしゃいます。もちろんそれも間違いではありませんが、Web制作のプロフェッショナルはさらに深い視点で競合サイトを分析しています。私たちが知りたいのは、表面的な見た目ではなく、その市場における「ポジションの空き地」がどこにあるかという点です。競合他社がどのようなキーワードで集客し、どのような顧客層をターゲットにし、逆にどの層を取りこぼしているのか。これらを把握することで、御社が勝てる戦略を立案するための材料としています。
例えば、競合サイトが非常に高機能でデザインも優れている場合、正面から同じ土俵で勝負を挑むのは得策ではないことがあります。その場合、あえて機能をごくシンプルに絞り込んだり、デジタルな冷たさを排除して人間味を前面に出したりと、戦略的な「外し」を行う提案が可能になります。つまり、RFPに競合情報を書くということは、制作会社に対して「このライバルたちに勝つための作戦を考えてくれ」というオーダーを出すことと同義なのです。したがって、単に業界最大手のサイトを貼るのではなく、実際に営業現場でバッティングする「リアルな競合」を挙げることが何よりも重要です。
「憧れ」と「現実」の競合を分けて考える
RFPに記載すべき競合には、大きく分けて二つの種類が存在します。一つは「ビジネス上の直接的な競合(Real Competitor)」、もう一つは「Webデザインやブランディング上の目標(Benchmark)」です。これらを混同して記載してしまうと、制作会社はターゲット設定を見誤る可能性があります。長野県や群馬県の中小企業の場合、ビジネス上の競合は近隣の同業者ですが、デザイン上の目標は東京の大手企業であるケースが多々あります。この二つを明確に区別し、「商売敵はこの会社だが、目指したい世界観はこの会社である」と書き分けることで、機能要件とデザイン要件のズレを防ぐことができます。
自社の競合がどこなのか、RFPの作成段階からプロの意見を聞いてみませんか?
第2章 「ここが嫌い」を伝えると、目指す方向性が明確になる
RFP作成において、多くの担当者様が遠慮しがちなのが「競合サイトの批判」です。「他社の悪口を書くようで気が引ける」と思われるかもしれませんが、実はこの「嫌いな点」「違和感を覚える点」の指摘こそが、制作会社にとって最も有益な情報の一つとなります。「良い」という感覚は主観的で人によって解釈の幅が広い一方、「嫌い」「使いにくい」という感覚は具体的で、機能やデザインの物理的な要素に紐づけやすいためです。例えば「トップページに動画がありすぎて重いのが嫌」「お問い合わせボタンが追従してくるのが鬱陶しい」といった不満点は、そのまま御社のサイトで避けるべき仕様(非機能要件)として定義できます。
また、競合サイトへの「違和感」を言語化することは、御社の独自の強み(USP)を再発見するプロセスでもあります。「競合A社のサイトは、安さを強調しすぎていて品がないと感じる」という意見が出るならば、御社が大切にしているのは「安さ」ではなく「品質」や「信頼感」であるということが逆説的に証明されます。「嫌い」を明確にすることは、消去法で「自社が大切にすべき価値観」を浮き彫りにするための最短ルートなのです。遠慮することなく、社内で挙がった「ライバルサイトへの不満」をRFPに盛り込んでください。
デザインや構成における「NG項目」の伝え方
具体的に「嫌いな点」を伝える際は、感情的な表現だけでなく、どの要素がその感情を引き起こしているかを分析的に記述すると伝わりやすくなります。「なんとなくダサい」ではなく、「色数が5色以上使われていて散漫な印象を受けるため、自社では3色以内に抑えてシックにしたい」といった具合です。また、スマートフォンでの閲覧体験(UX)に関する指摘も重要です。「競合B社はスマホで見た時にメニューが押しにくい。我々の顧客は高齢者が多いため、ユーザビリティの低さは致命的である」といった記述があれば、制作会社はスマホ最適化(レスポンシブデザイン)の設計において、ボタンサイズや文字の大きさを最優先事項として扱うようになります。
第3章 地域ビジネス別・具体的なRFP記述シミュレーション
では、実際に長野県や群馬県でビジネスを展開している企業が、どのように競合情報をRFPに落とし込むべきか、具体的なシミュレーションを見ていきましょう。ここでは、単なるURLの列挙ではなく、地域特有のビジネス環境や商圏を意識した「プロに響く書き方」をご紹介します。
CASE 1:長野県東御市・上田市の製造業(精密部品加工)
背景:長野県東御市から上田市にかけてのエリアは、精密機械や金属加工の工場が集積しています。このモデルケースでは、長年大手の下請けを中心に行ってきた東御市の部品メーカーが、自社技術をアピールして新規取引先を開拓するためにサイトリニューアルを行う想定です。
【悪いRFPの例】
競合:株式会社〇〇(小諸市)、株式会社△△(上田市)
要望:これらの会社よりもかっこいいサイトにしてください。
【良いRFPの例】
競合A社(小諸市):
このエリアでいち早くWeb集客を始めており、SEOでも上位にいる。しかし、サイト全体の色使いが原色系で派手すぎて、我々の業界に求められる「ミクロン単位の精度」や「実直さ」が損なわれているように感じる。また、設備紹介のページが古く、最新技術への対応力が伝わってこない。
自社の狙い:
A社のような派手さは不要。余白を活かした清潔感のあるデザインで「技術の信頼性」を表現したい。設備のスペック表は見やすさを重視し、検索機能もつけたい。
解説:
このように記述することで、制作会社は「デザインの方向性は『誠実・清潔・高精度』」「コンテンツの肝は『設備・技術詳細』のデータベース化である」と即座に理解できます。東御・小諸エリアの競合との差別化ポイントが明確になります。
CASE 2:群馬県高崎市・前橋市のサービス業(リフォーム・外壁塗装)
背景:群馬県は持ち家率が高く、リフォームや外壁塗装の激戦区です。高崎市を中心に地域密着で展開する塗装店が、前橋市や県内全域を展開する大手パワービルダー系との差別化を図るケースです。
【悪いRFPの例】
競合:〇〇ハウス(県内大手)、△△リフォーム(全国チェーン)
要望:大手には勝てないので、親しみやすい感じでお願いします。
【良いRFPの例】
競合B社(前橋市・県内広域):
リスティング広告も大量に出しており露出が多い。しかし、サイトを開くと「キャンペーン」や「割引」のバナーばかりで、誰が施工するのかという「職人の顔」が全く見えない。システム化されすぎていて、相談しにくい冷たさを感じる。
自社の狙い:
我々は高崎市内の近所付き合いを大切にしたい。価格競争ではB社に勝てないので、「代表者の挨拶」や「施工スタッフのブログ」を前面に出し、『顔が見える安心感』で勝負したい。B社のようなポップアップ広告や追従バナーは絶対に導入したくない。
解説:
競合の「弱点(冷たさ、売り込みの強さ)」を指摘することで、自社が取るべき「高信頼・人間味」というポジショニングが明確になります。高崎と前橋という近接した商圏の中で、どのように棲み分けるかの戦略がRFPだけで伝わります。
情報の整理に役立つ比較表の活用
文章だけでなく、以下のような比較表をRFPの別紙として添付すると、さらに認識の齟齬を防ぐことができます。記号だけでなく一言コメントを添えるのがコツです。
| 比較項目 | 自社(目指す姿) | 競合A社(上田市) | 競合B社(東京・大手) |
|---|---|---|---|
| デザインの印象 | 信頼感、落ち着き、白ベース | 派手、動きが多い(△ 騒がしい) | 洗練、シンプル(◎ 参考にしたい) |
| コンテンツの深さ | 技術解説をブログで深掘り | 浅い、カタログスペックのみ | 事例が豊富(◎ 構成を真似たい) |
| スマホ対応 | 最優先(現場監督が見るため) | 対応済だが文字が小さい | アプリのような操作性 |
| 強みの訴求 | 試作開発・特急対応 | 量産・コストダウン | トータルソリューション |
まとめ:競合分析は「敵を知る」だけでなく「己を伝える」工程
RFPに競合サイトの情報を記載することは、単に制作会社にライバルの存在を知らせるだけの手続きではありません。それは、競合との比較を通じて「自社は何者であり、誰に対して、どのような価値を提供したいのか」を制作会社に深く理解してもらうための重要なコミュニケーションです。「あの会社のここが嫌だ」という率直な意見こそが、オリジナリティのあるWebサイトを作るための原石となります。
特に長野や群馬のような地域性が色濃く出るエリアでは、商圏ごとの微妙なニュアンスや、地元企業ならではの「肌感覚」を共有することが成功への近道です。ぜひ、遠慮することなく具体的な社名と、率直な感想をRFPに盛り込んでください。その熱意と情報量が、制作会社から「御社だけの正解」を引き出す鍵となるはずです。
よくある質問(FAQ)
- Q. まったく異業種のサイトを「参考にしたいサイト」として挙げても良いですか?
A. はい、大歓迎です。例えば「製造業だが、デザインの雰囲気は老舗旅館のような『おもてなし感』を出したい」といった指定は、独自の世界観を作る上で非常に有効なヒントになります。 - Q. 地域内に明確な競合がいない場合はどうすればいいですか?
A. その場合は、「顧客が検索しそうなキーワード」で上位に表示される他県の会社や、代替サービス(Webサイト以外の解決手段など)を競合と見なして記載してください。Web上の競争相手は近隣だけとは限りません。 - Q. 予算が少ないのですが、制作会社はそこまで詳しく競合調査をしてくれますか?
A. 予算規模によりますが、詳細なマーケティングレポートは有料オプションになることが多いです。しかし、RFPにURLとポイントが記載されていれば、提案作成の範囲内で簡易的な確認は行ってもらえます。まずは情報を提示することが大切です。